カクカクとした幾何学的な線で、あらゆるモチーフを独自のスタイルへと落とし込む。その特徴的なアートワークは、一度見たら忘れられない強烈なインパクトを放っています。
今回は、そんな独自のアートスタイルを確立しているアーティストの澁谷忠臣氏にインタビューを敢行。壁面のペイントからスニーカーのコラボレーション、さらには「仏像」という意外なモチーフに至るまで、多岐にわたる創作活動の裏側を伺いました。
作品に込められた熱いメッセージや、時代を映し出す彼のアートの源泉を紐解きます。
ロボットアニメや建築物がルーツ。「直線的に再構築する」アートスタイル
――まず目を引くのが、特徴的な「カクカクとした線」を用いた作風です。この幾何学的なスタイルは、どのようなところからインスピレーションを受けているのでしょうか。

「元々、幾何学的なデザインがすごく好きだったんですよね。そこに加えて、いわゆるグラフィティカルチャーの文字だったり、未来的なもの、さらには建築物のような人工的なものからも強く影響を受けています。
特に子供の頃は、ロボットのアニメなどが本当に大好きだったんです。そういった自分のルーツにある要素が混ざり合って、今のスタイルに行き着いているのだと思います。
僕のアートの根底にあるコンセプトは『直線的に再構築する』ということです。既存のモチーフを、自分なりの幾何学的な直線で再構築していく。それが僕のブレないスタイルになっています」
スケートカルチャーの熱さを体現。「百折不撓」の精神とスニーカーコラボ
――その独自のスタイルは、キャンバスや壁面にとどまらず、プロダクトにも落とし込まれています。スケートシューズブランド「REVENGE X STORM(リベンジストーム)」とのコラボレーションについて教えてください。

「リベンジストームとのコラボスニーカーでは、『百折不撓(ひゃくせつふとう)』というコンセプトを落とし込みました。スケートボードって、本当に激しく何度も転ぶじゃないですか。でも、何度失敗してもまたチャレンジしていく。その過程で達成感を感じるという、スケートのカルチャーを象徴しているのが『百折不撓(七転び八起き)』の精神だと思ったんです。
以前、スケートのランプにアートを描いた時に思いついたアイデアだったのですが、このコラボレーションが決まった時に『まさにぴったりだな』と感じて採用しました。
もう一つ、『GEO FLAME(ジオフレーム)』と名付けたデザインも制作しました。これはジオメトリック(幾何学)なフレームという意味で、工業的でカクカクとした直線的なデザインになっています。まさに元のフレームのデザインを、僕のスタイルで『直線的に再構築』したものですね。
僕自身、全身真っ黒などモノトーンの服を着ることが多いので、そうしたファッションの時に、足元にこのスニーカーがポンとあると良いアクセントになるんじゃないかという思いもありました」
ヒップホップの教えと震災。なぜ日本人は「仏像」を描くのか
――ストリートやスケートカルチャーと密接に関わる一方で、「仏像」というモチーフも描かれています。この全く異なるように見えるテーマには、どのような背景があるのでしょうか。

「僕はヒップホップカルチャーから多大な影響を受けているんですが、ヒップホップの根本には『自分の街や自分自身を表現しなければならない』という教えがあるんです。僕は日本人ですから、じゃあ日本のカルチャーを自分なりの解釈で表現したい、とずっと思っていました。
ただ、当初は『自分が仏像を描いていいのだろうか』という葛藤があり、なかなか描けずにいたんです。そんな時に東日本大震災が起きました。悲しい出来事があり、多くの方が亡くなられた中で、何か気持ちを込めて描くことはできないかと考えたんです。
仏像には元々、供養であったり、天災を鎮めるといった本来の意味があります。そこに、僕自身のアートのテーマである『再構築』が繋がったんです。仏像を描くことで、新しい日本やこれからの価値観をさらに再構築していく。祈りや希望を込めて描くことができる。そう思えた時に、ようやく仏像を描き始めることができました」
モノトーンからカラフルへ。時代とリアルを反映し続ける作品たち
――祈りを込めて描き始めた仏像の作品ですが、初期と現在では色彩にも変化が見られますね。
「そうですね。最初はやはり震災という背景や、仏像というモチーフもあって、モノトーンな色調で描いていました。でも次第に、もう少し明るい色を入れられないかと考えるようになったんです。
僕自身インドが好きで何度か足を運んでいるのですが、向こうの神様の像ってすごくカラフルなんですよね。色々と調べるうちに、実は日本の仏像も、劣化する前の本来の姿はしっかりと色が入っていてカラフルだったということが分かってきました。
それなら、カラフルに描くのは全然ありだな、と。朽ちていくような感じではなく、パワーがみなぎるような、元気が出るようなカラフルな仏像を描こうと思うようになり、そこから色彩が豊かになっていきました。
今後については、壁一面に仏像がずらっと並んでいるような展示ができたらいいなと構想しています。
僕の作品には一つ一つにコンセプトや思いを込めていますが、それもやはりヒップホップからの影響が大きいです。その時々の時代背景や、世の中のリアルな状況、環境の動きといったものを、しっかりと作品に反映させていきたいと常に考えています」
【澁谷忠臣 | TADAOMI SHIBUYA】プロフィール
1973年生まれ、横浜市出身。多摩美術大学デザイン科立体デザイン専攻プロダクトデザイン専修卒業。直線的に再構築する世界観を持つイラストレーター/アーティスト。その独自のスタイルで数々の世界中の企業とのコラボレーションやクライアントワークを行っており、2008年にはGIVENCHYのエンブレムデザイン、2011年にはNIKEAIR JORDAN CP3.IVのポスター、Tシャツなどのビジュアル全般を手がけている。また、2012年には、氏の描いたRGⅢのイラストが米ワシントンポスト特別号の一面を飾る。
最近ではJORDAN BRANDからの依頼でマイケル・ジョーダンの88年のスラムダンクコンテストを記念したTシャツのデザインを手がけた。また、これまでにhpgrp Gallery Tokyoでの個展をはじめ、2009年WeSC GALLEY PARIS、2015年バンコクGOJA galleryでの個展や、ロンドン、NY、LA、台北などで数々の展示に参加、表現の場は国内外、ジャンルを問わず多岐に渡る。
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